海外安全対策情報 令和元年度第4四半期

令和2年4月9日

1 社会・治安情勢  

 ペルナンブコ州社会防衛局の発表によると,ペルナンブコ州における2019年の凶悪犯罪による殺人件数は対前年比約17%の減少をみたものの,州全体で年間3,468件と,依然日本とは比較にならない高い数値(日本全体の約3.6倍)となっており,ブラジル国内においても当地の治安の悪さは常に上位に位置する。殺人発生率の高さは,主に麻薬取引とアルコール依存症に関連する犯罪が原因であるが,拳銃を所持している犯罪が多く,銃撃戦に発展する場合があり,住民・通行人が流れ弾に巻き込まれるケースも多い。運転マナーも非常に悪く,速度超過や信号無視,運転時の不注意等による交通事故が多発しており,各地で死傷者が出ている。また,通勤・帰宅ピーク時の交通渋滞はブラジル国内で最悪の状況となっており,異常な交通渋滞は不要なトラブルの元にもなっている。
 
 また,レシフェ市及び大都市圏では,携帯電話販売店や薬局店を狙った武装強盗,人通りの多い場所や観光スポット周辺,路線バス,メトロ(郊外電車)車内においても,一般強盗・短時間強盗が多発している。さらに現金輸送車が襲撃される事件も発生している。昼夜を問わず,銃器を使用した犯罪が頻発しており,強盗と警察との銃撃戦で一般市民が被害に遭うケースは少なくなく,十分な注意が必要である。渡航情報(危険情報)※についても,ペルナンブコ州レシフェ大都市圏は「十分注意してください」を継続しており,生活する上で常に間断無き警戒心が必要である。
※当館管轄州では,他にバイア州サルバドール大都市圏とセアラ州フォルタレーザ大都市圏も同様に「十分注意してください」を発出中。
 

2  レシフェ市(ペルナンブコ州含む)における犯罪事例(1月~3月)  


(1)1月4日午後7時30分頃,レシフェ市クラド地区で強盗事件が発生し,軍警察のパトロール隊員が同地区にある拘置所近くで不審な男2人組を呼び止めたところ,男らが逃走した。さらに逃走した2人組は,コッケイラル駅の歩道橋で追跡してきた警官に向け発砲したため銃撃戦となったが,1人(34歳)が死亡し,他の1人は逃走した。

(2)1月20日午前6時頃,オリンダ市(レシフェ市北隣)ジャルジンアトランチコ地区の歩道で,通勤途中の女性が前方から来た男に携帯電話を奪われそうになったため,抵抗したところ刃物で傷つけられた。女性は携帯電話を奪った犯人を追いかけたが,途中で倒れ付近の住人に助けられた。

(3)2月12日午後,レシフェ市ジャルジンサンパウロ地区レアンドロバヘート街の宝くじ売り場の前で,警備会社の現金輸送車が黒い車で乗り付けた5人組の強盗に襲われた。警備員と犯人らとの間で銃撃戦となり,警備員の1人(50歳)が肩,腹部及び首を撃たれ救急病院に運ばれた。犯人らは警備員の散弾銃のみを奪って逃走した。なお,撃たれた警備員は3回目の手術を受けた16日に死亡した。

(4)3月25日午後5時頃,オリンダ市(レシフェ北隣)のアンパロ地区コロネルジョアキンカバルカンチ街で,フランス人旅行者(男性,64歳)が地元の女性を連れてUberから降車したところ,乗用車で追跡してきたと思われる男女に拳銃を突き付けられ金品を差し出すように言われたが応じなかったため,拳銃で殺害された。犯人らはUberの運転手から車の鍵を奪った以外は何も盗らずに逃走した。
 

3  管轄州における殺人・強盗等凶悪犯罪に係わる事例等(1月~3月)  


(1)セアラ州
ア 1月2日午前,フォルタレーザ市セントロ地区インペラドール通りの外国語学校で,拳銃のようなものを持った強盗が,教師と事務員2人を脅し,携帯電話を奪い,トイレに監禁した。被害者らは隠し持っていた携帯電話で同校の経営者に連絡,通報を受けた軍警察が現場へ駆けつけたが,犯人は裏口から逃走した後であった。

イ 1月27日午前6時頃,フォルタレーザ市パピク地区の住宅街で,2人組の強盗が連続して2台の乗用車を奪った。また,2台目の車は事故を起こしたため乗り捨て,その後,路上駐車していた他の1台のドアをこじ開け,車中にあった金品を奪った。なお,2台目の車に設置されていた防犯カメラに犯人らの画像が残っており,また,犯人の1人が車両盗難の罪により保釈中でGPS対応の足枷を付けていたため,容易に居所が判明し,同日午後,それぞれの自宅で警察に逮捕された。

ウ 2月12日午前,フォルタレーザ市バハドセアラ地区を走行中の市内バスに女2人組の強盗が乗り込み,刃物で乗客を脅し金品を奪い,運転手の首筋に刃物を押し付け,バスを強引に停車させ,下車する際に男性の乗客を刃物で切りつけたが,その後,数人の乗客に追いかけられた上,取り押さえられ軍警察に引き渡された。

エ 2月24日,フォルタレーザ市コンジュントセアラ地区の公園で,オートバイに乗った2人組が露天商から現金を脅し取ろうとしていたところ,近くに停まっていた乗用車の中から何者かに銃で撃たれそのまま逃走した。なお,現場に残されたオートバイは同月18日にフォルタレーザ市ジェニバウ地区で盗難され被害届が出ていたバイクだった。

オ 3月1日夜,マラカナウ市パジュサラ地区(フォルタレーザ南方19km)で,オートバイに乗った男女が通行人をモデルガンで脅し携帯電話などを奪ったが,被害者の1人がモデルガンだと気付き,付近の住人の協力を得て犯人らを追跡,逃げ遅れた女を捕まえ,大勢で棍棒やレンガで殴るなどして殺害した。男はオートバイで逃げ去った。文民警察殺人課が集団暴行殺人として捜査を開始した。

カ 3月21日夜,フォルタレーザ市アルデオータ地区マリアトマジア街で,利用客を待っていたUberが3人組の強盗に襲われた。Uberの運転手(31歳)は驚いて車を発進させたが,頭部を撃たれ数十メートル先のフェンスに衝突した。犯人らは待機していた車で逃走し,被害者は救急車で病院に運ばれた。

キ 3月30日早朝,フォルタレーザ市エジソンケイロス地区の家具量販店の駐車場で,警備員が銃を所持した男に不意に襲われ,腰に装備していた拳銃を奪われた。文民警察が監視カメラの映像を基に捜査を開始した。
 
(2)リオグランデドノルテ州

ア 1月20日午後3時30分頃,ナタル市ボンパストール地区の市立診療所に,拳銃を所持した覆面強盗が押し入り,警備員の拳銃と携帯電話を奪って逃走した。なお,事件が起きた際,診療所内にいた患者30人と医師らは一番奥の診察室に避難していた。

イ 1月30日夜,ナタル市グラモレ地区の路上で男性3人が立ち話をしていたところ,オートバイに乗った男2人組に拳銃で脅され,携帯電話と腕時計を奪われた。また,被害者の1人が,犯人から「殺す」と言われ拳銃を顔に向けられたため,咄嗟に拳銃を叩き落そうとして犯人と格闘となり首筋を撃たれた。犯人らは逃走し,被害者は病院で手当てを受けた。

ウ 2月17日午前1時20分頃,ナタル市ピチンブ地区で,Uberで帰宅した連邦警察官(男性)が自宅前で降車したところ,近くに停車していた2台の乗用車から出てきた文民警察官と称する男らに家宅捜査をすると言われた。男性は不審に思い連邦警察官の身分を明かし捜査令状の提示を求めたところ,男らは強盗であると名乗り,男性を拳銃で脅し家の中に入り,拳銃,テレビ及び携帯電話を奪って逃走した。被害者の男性と家族(妻,娘)にケガはなかった。

エ 2月29日午前,ナタル市カピンサント地区の民家に,乗用車で乗り付けた3人組の強盗が押し入り,財布及び携帯電話を奪い,同民家の乗用車で逃走した。

オ 3月15日午前3時頃,ナタル市アレクリン地区にある深夜営業の飲食店に,乗用車でやってきた4人組の男女が店内に入ろうとしたところ,2人組の拳銃強盗に襲われ車を奪われそうになった。4人組の内の1人で軍警察の元伍長(男性,51歳)が拳銃で強盗と撃ち合いとなり,同人と仲間の女性(31歳)が撃たれ死亡した。犯人らは逃走,内1人が現場近くに留まっていたところを軍警察のパトロール隊に発見され,再度撃ち合いとなった。なお,犯人は撃たれ病院に運ばれる途中で死亡した。
 
(3)パライーバ州

ア 1月16日夜,ジョアンペッソア市ジョアンパウロ地区の貧民街の路上で,男性(25歳)が強盗に携帯電話を奪われ,拳銃で胸部を撃たれた。被害者は救急車で病院に運ばれたが,命に別状はなかった。

イ 1月31日夜,ジョアンペッソア市マンガベイラ地区ジョゼファタベイラ通りで,女性(17歳)がオートバイに乗った2人組の強盗に襲われそうになり,走って逃げたが追いつかれ背中を銃で撃たれた。被害者は救急車で病院に運ばれた。

ウ 2月4日午前8時15分頃,ジョアンペッソア市のパライーバ連邦大学キャンパス内所在の郵便局に,銃を所持した3人組の強盗が押し入り,レジの現金と警備員の拳銃を奪って逃走した。

エ 3月10日夜,ジョアンペッソア市インドゥストゥリア地区を走る市内バスが,刃物を所持した4人組の強盗に襲われた。犯人らはトゥリンシェイラ街の停留所から乗り込み,直ぐに運転手を刃物で脅し,僅か5分で数人の乗客から携帯電話等を強奪しバスを停車させて逃走した。
 
(4)アラゴアス州

ア 1月18日未明,マセイオ市サンタアメリア地区の集合住宅の敷地内で,1組の男女が,乗用車から降りてきた男4人組の強盗に囲まれたため逃げようとしたところ,男性(27歳)が拳銃で撃たれた。被害者は救急車でマセイオ市内のアラゴアス州立総合病院に運ばれた。

イ 2月15日午後,マセイオ市シダデウニベルシタリア地区で,乗用車の家族連れが4人組の強盗に襲われた。2人の強盗が車に乗り込み,被害者の別荘まで行き,テレビ4台の他金品を奪い被害者の車で逃走した。

ウ 3月14日午後,マセイオ市ボンパルト地区で,Uberの運転手が車内で撃たれ,州立総合病院へ運ばれた。
 
(5)セルジッペ州

ア 2月4日午前5時40分頃,アラカジュ市サンジョゼ地区の民間病院に,オートバイで乗り付けた2人組の強盗が,待合室にいた患者及び看護師など数人を銃で脅し,金品を奪って逃走した。

イ 3月13日午前9時55分頃,アラカジュ市イナシオバルボーザ地区メジシ団地の近くで,徐行中のオートバイが2人組の強盗に押し倒され,乗っていた男性が鎖骨を骨折した。犯人らは奪ったオートバイで逃走した。
 
(6)バイア州
ア 1月17日午前,サルバドール市のカジャゼイロ地区とボッカダマタ地区の間の路線バス車内で,2人組の強盗が乗客から金品を奪おうとしたが,逆に取り押さえられ警察に引き渡された。

イ 2月14日から16日,サルバドール市及び周辺都市で殺人事件が合計で18件発生した。内訳は次のとおり。
・サルバドール市:ダニエルリスボア地区,ウルグアイ地区,カサンジェ地区,ペリペリ地区,パルケサンクリストバン地区,サンマルコス地区,ナランジーバ地区,カネラ地区,オルトフロレスタル地区,スアスーナ地区,パウミウード地区及びイリャアマレラ地区 各1件
・周辺都市:カンデイアス市 3件,シモンエスフィーリョ市 2件,カマサリ市及びラウロデフレイタス市 各1件

ウ 3月24日午後,ラウロデフレイタス市(サルバドール北隣)で車両の盗難事件が発生,軍警察のパトカーがサルバドール市ムスルンガ地区を走行中の盗難車を発見し追跡,パトカーと盗難車との間で銃撃戦となり,オルランドゴメス通りで盗難車は横転,乗っていた男が付近のコンドミニアム内に逃げ込み,警官隊と軍警察のヘリコプターが追跡,コンドミニアム内での銃撃戦の末に犯人は逮捕された。

 

4 テロ爆弾事件発生状況

 管轄内における当該事件の発生は確認されていない。
 

5 誘拐・脅迫事件発生状況

 管轄内における当該事件の発生は確認されていない。
 

6 対日感情

 対日感情は良好であり,特段の変化は見られない。
 

7 日本企業の安全に係わる諸問題

 管轄内における当該諸問題は発生していない。
 

8 邦人の被害事例

 管轄内における被害の発生は確認されていない。